Tatehitoの日記

趣味のこととか。

感想『お金の減らし方』

森博嗣『お金の減らし方』はお金の教科書ではなく、価値ある人生を送るための参考書だった。 - Everything you've ever Dreamed

フミコフミオさんが紹介されているのがキッカケで、森博嗣『お金の減らし方』を読んだ。僕はビジネス本、ハウツー本などといった、いわゆる自己啓発本が(他人の意見を押し付けられている気がするから)苦手だ。しかしフミコフミオさんが言うには森博嗣さんの本は「こうせよ、こうしろ、という言い方をしない」とのことだったので、それならばと久方ぶりにこの手の本を読んでみた(本書は自己啓発本ではなく「エッセイ」に分類されるだろうけど)

実際に読んでみると、たしかに意見を押し付けるような印象は受けなかった。著者の人生観を思いのままに正直に綴っているような感じ。「僕の人生、僕の考えはこうだけど、参考にしたければしてね」くらいのトーン。なので拒否反応なくすんなり読むことができた。(それだけに、帯に「収入の2割は必ず好きな事に使え!」と強調されているのが目についた。おそらくこの帯は著者の意図したものではなく出版社の・・・略)

本書は著者の「お金への価値観」ひいては「価値とは何か」についてのエッセイだ。お金は何かと交換して初めて価値を発揮する。だから無目的に漠然とお金を増やそうとすることに意味はない、と。たしかにそうだと思う。

僕がお金と交換したい欲求はなんだろう?と考えてみると、現状で結構満足しちゃってるなあ、という気がしてきた。好きなゲームや映画、本は充分楽しめているし、時間外労働なしでそれなりに楽しく働けているし。今以上のお金を得てやりたい事はハッキリ思いつかない。強いて言うならもっと良い場所に住みたいとか、音響設備を良くしたいとか、そういうグレードアップ欲求がないわけではないのだけど。ただそのために仕事に費やす時間を増やして趣味に投じる時間を削ってしまうのは幸福度を落とす気がしている。

じゃあ現状維持で問題ないじゃん、となるのだけど将来に対する不安がある。フリーランスがゆえにボーッとしてたら収入は上がることはないし、娘が大きくなったら支出も増える。「このままで幸せ」だけど「このままじゃ不味い」。こういうジレンマに囚われているということは、著者のような確固たる価値観が僕の中にはまだ無いのだろう。

ところで、著者の森博嗣さんは国語が苦手、小説も読まない、文章を書くのも好きではない、という人物でありながら、「バイト」として小説を書いて億単位の印税を得たというにわかには信じがたい人である。そんな著者の作品に興味が湧いて、『すべてがFになる』を読み始めたのだけど、フツーに面白い。いやほんと、世の中には信じ難い才能を持った人がいるもんだなあ・・・。(勘違いしていたのだが、森博嗣さんの処女作は『すべてがFになる』ではなく『冷たい密室と博士たち』だった。いずれこちらも読みたい)